テーマ:日本の自画像と日本外交の未来図を描く
講演会趣旨
戦後70年を迎え、日本は今、国際的役割を巡って大きな転機に直面しています。
21世紀の始まりを象徴するかのような、9.11米中枢同時多発テロは、安全保障上の脅威が国家だけではなく非国家もなり得ることを世界に突きつけ、グローバル化の進展や技術革新はサイバー攻撃、大量破壊兵器の拡散など予測困難で不確実性の高い新たな脅威を引き起こし、さらに、ウクライナ情勢をめぐるロシアの動きや中国の大規模な軍備拡張及び南シナ海における勢力圏拡大に象徴されるごとく、国家間のパワーバランスにも大きな変化を生じさせるなど、世界の情勢はまさに未曾有の激動に直面しているように思われます。
また、こうした背景には、単なる利害の対立だけではなく宗教・民族・文化など価値観をめぐる妥協困難な対立が反映しており、いかにして、多様な価値観を調和させるかが問われていると考えられます。
では、国際大国たる日本は果たしていかなる役割が問われているのでしょうか。今日の国際社会は、国際法や国際制度を含め、ハンチントンが指摘したように、未だ西洋的価値観が色濃く反映されています。そのような中にあって、日本は、自らの伝統・文化を保持しつつ、しかも他のアジア諸国に先んじて西洋近代化を図り、欧米諸国と交流し、アジアと欧米諸国との架け橋となってきました。
こうした事実を誠実に踏まえるなら、大国たる日本にとっての「国際化」とは、単に国際社会に順応することではないでしょう。むしろ、そうした自らの個性を発揮して積極的に国際社会に働きかけることこそが、本当の「国際化」ではないでしょうか。
そのためにも、私たちは、今日の国際社会が抱える本質的問題を洞察し、世界に通用する日本の理念と強さを自覚し、国際社会を真に人類共生の場へと導くための具体策を構想する必要があると考えています。
今講演会では、日本及び日本外交の真価についての見識を深めると共に、近代の国際政治が克服すべき課題とそれに立ち向かう日本の役割を考えるヒントを獲得し、国際社会が真の意味で人類共生の場となるために、日本及び日本人が果たすべき役割を見出して参りたいと思います。